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ナビゲーションテクニック


ナビゲーションテクニック

ナビゲーションテクニックについてご説明してゆきます。スイムコースに沿って最短距離をいかに泳いでゆくかがレースのキーとも言える重要な部分で、単にプールでのタイムが速いからといってレースで勝てるものではないのです。一般的にはオープンウオーターでは競技距離の5~13%増しの距離を泳ぐとされています。ここでの5~13%は距離に換算すると非常に大きな差となるのである。例えば3km競技だとするならば最短距離を抜けても3kmの5%増で150mほど余分に泳ぐことになる。それが13%増ということになると、何と約400mも余計に泳ぐことになり、いくらスピードがあっても他の人より400mも多く泳いだのではたまったものではない。

オープンウオータースイミングのスキルアップを図るにはまず「ナビゲーションテクニック」を習得しなければならないのである。ナビゲーションテクニックとは;

  • 目標確認
  • 両側呼吸
  • 自然条件における的確な判断

目標確認

オープンウオーターでのスイムレースはプールと異なり、コースロープが引かれ、水底にラインが引かれているわけではなく、海上に限られたブイがあるのみ。そのブイを的確に判断して、周りの状況(風景)を確認しながら最短距離を進むためには、絶えず目標物を短時間で(瞬時に)確認しながら泳ぐテクニックが必要となる。

“ヘッドアップスイミング”といって頭を起こして前方の目標物を確認しながら泳ぐテクニックのことである。まずその姿勢(ボデイポジション)が大事。上半身を大きく水から出して泳ぐのではなく、出来るだけ水面すれすれに目だけを出して前方あるいは周りの目標物を確認するのである。みなさんもテレビなどでクロコダイルが水面すれすれに獲物を狙う姿を見たことがあると思うが、欧米ではこのスタイルに真似てこの姿勢をクロコダイルスタイルと呼ぶのである。初心者は水を飲むのではと心配するあまりに思い切り身体を起こして前を見ようとするがこれは身体に相当な負担がかかり疲労原因となる。腰を痛める原因にもなるので注意が必要。

但し、「海で浮く」からと言って簡単に出来る動作ではない。通常のプールトレーニングの中でぜひ習得してもらいたい。呼吸前に見るスイマー、呼吸を終えてから見るスイマーいろいろである。決まったやり方はないので、自分の呼吸のタイミングにあわせて、かつどちら側のストロークに合わせるかを決めること。プールで徹底的に習得してほしいテクニックだ。グループでトレーニングを行うときなどは、アップの時でもよいので、プールのスタート台付近にキックボードかプルブイを置いて、5~8ストロークごとに、そのキックボードがどこに、何色をして、どんな形状かを泳ぎながら判断する癖を付けてほしい。慣れてきたら前だけでなく、プールサイドのどちらかにその目標となる“物”を置いてみる。(コーチがいる場合には事前に選手には伝えずに、泳ぎ始めてから自分でその目標物が左側のプールサイドに置かれているのか右側なのかを判断させるのもよい。)

また初心者はすぐにヘッドアップスイミングをしようといっても無理なので、プールの中央付近でいったん立ち止まり、“タチ泳ぎ”をしながら2~3秒その場で止まり、しっかりと目標を確認して再び泳ぎだす練習をするといい。なぜなら初心者がスイムレースではじめて出ると、このヘッドアップスイミングテクニックが使えないために、いったんスイムを止めて、その場で平泳ぎや立ち泳ぎなどでブイを確認して泳がなければならなくなる。その場合立ち泳ぎからクロークに換えて泳ぎ始めるには余分なネルギーが必要となるのである。慣れない人はこれを繰り返すうちに疲れてしまい、ひいては気持ちもネガテイブになり棄権ということになりかねない。それゆえこの「スイム&ストップ&ゴースイム」と呼ばれるこのトレーニングは初心者にとっては有効でぜひこの練習から始めてほしい。

通常6~8ストロークごとに目標確認をする。もちろん海の状況しだいでその数は異なってくるが。(穏やかな海や透明度の高い海では20~30ストロークごとでもかまわない・但し曲がらずに・まっすぐ泳げるスキルがあってのことだが)

くどいようだがとにかく最短距離(直線)を泳ぐために目標を確認するのだと認識すること。

次に前方だけでなく周りの状況も良く見ておくこと。いったん海に出ると単調で目標物がほとんどないために、自分が現在どの位置にいるかがわからなくなるときがある。それはいくら上級者でも前方のブイだけを見ながら泳ぐと必ず方向が狂ってくる。点と点をむすんで自分はまっすぐ進んでいると思っていても自然条件によって必ずスイマーは曲がって進んでしまうのである。なるべく周囲の状況(特にブイの延長線上に何があるか・自分の左側にビーチが見えてるか・スタート前に海上に止まっていたヨットがどちら側にいるか等々)を的確に判断して泳ぐ。即ちなるべく点を面で捕らえて判断するとわかりやすい。

また初心者などはスタートして気がついたら“ひとりぽっち”になってしまった場合などは、コースを逸脱している可能性があるのでいったん止まってでも目標確認をおこなうといい。あわてずにゆっくりと冷静に自分がスタートしてきたビーチを見て、そして第一ブイの方向を確認し、そのあとどの方向に向かってゆくのか・あるいは付近に泳いでいる選手はいるかなどを確認して最短距離を見定めて泳ぎ始めることだ。レースに初めて出場する人やまだ海でのレースに慣れないスイマーなどはスタート前に(召集のときなど)、あるいはスタートラインにたったときに周りを見て、「同じ年恰好」「自分と同じレベルの泳力」か判断してそのスイマーをマークして泳いでゆくべき。ひろい海で一人ぽっちのレースほど寂しくて・不安になることはないから。ぜひレースはスタート前から始まっているのだと思ってください。レース中、上級者などでありがちなのはトップスイマーにつけばいいと思ってついてゆくとそのトップスイマーが方向を失った場合には自分も巻き添えを食うことになる。トップよりも2番手3番手のほうが後ろからコースの進行状況を判断できるのでいいのだが自分でこちらが最短距離と判断したなら「トップと離れて自分が信じたスイムコースを泳ぐ決断(勇気)が必要です。また上級者はレース前にブイの延長線上の建造物などの確認と太陽の位置などをあらかじめ頭に入れておくように。以上が目標確認のテクニックであり、オープンウォータースイミングの基本ともいうべき内容なので、プールでの泳ぎこみと同時に、このようなテクニックを身につけていただきたい。

両側呼吸

オープンウオータースイミングにおいてはなぜ両側呼吸が必要なの?という問いに「必要だから」と答えるコーチがいる。それは答えになってない。

その答えは以下の点が挙げられる:

左右両側の風景を見ながら目標確認をする。

貴方が進もうとしている方向を修正しやすくする。

長時間のスイムにおける首や肩の疲労を和らげる。

波の方向によって呼吸位置を変える。

目標確認をするためには前だけでなく左右を確認して最短距離を進むためには両側呼吸が必須となる。スイマーによってはやはりしやすいほうに偏る傾向があるので規則的にやるのはつらいと言う方は、何回に一回か逆側呼吸をすればいい。その場合にあくまで目標の確認なのではっきりと目標が見えない場合には連続して逆側呼吸をおこなうことも想定しておくこと。

そして自分の方向が正しい方向に進んでいるのかを確認し、修正をするためにはやはり両側の風景確認並びにどちらにブイが位置し、どちらにビーチの風景が広がっているのかを確認する必要がある。柔軟な選手は後方確認も呼吸時にする。そうすることによって “前後左右“を的確に確認して正しい方向へと進んでゆくのである。また3kmや5kmなどのロングデイスタンスになると40分から1時間以上も片側だけの呼吸をしていると、プールでは想定できない波や潮流の影響を受け通常よりも疲労度が増し、しいいては怪我の原因ともなるのである。バランスよく長時間を安定したスイムで乗り切るためには両側呼吸が絶対条件です。最後に波の方向によって呼吸位置を変えるのは「水を飲むリスクを避ける」ためである。海上にでて一般海水域に達するとビーチサイドでは考えならない風などの影響によって“チョッピーウエーブ”と呼ばれる間断なき小さい波が貴方に向かってくる。その場合に波の向かってくる方向にしか呼吸が出来ないと悲劇だ。毎回呼吸をするたびに水を飲んでしまう危険がある。「おれは大丈夫、呼吸のタイミングがわかっているから」と言っても相手は自然だ。その波は不規則にやってくるのだ。何回かの小さな波のあとに必ず大きな波がやってくる。そんな時同じタイミングで呼吸をしようとするとつい水を飲んでしまう。経験のある選手もいるだろうが、飲んでしまうと息がつまって泳ぎどころではなくなりパニックに襲われる。初心者などはパニックになるとただもがくだけで水面から顔を出して呼吸をしようとするが息がつまってうまく出来ない。よけいにもがくことになる。そんなときはあわてずにいったん水中に潜り、“バブリング“を何回かして吸い込んだ水を吐き出すことだ。まあスイムレースではよくあることなので”リラックス“して”呼吸を整えること“が大事。ここであわてると貴方の中に潜在している”ネガテイブマインド”がいっぺんに噴出し「苦しい~・どうしよう?足がつかないし・誰も助けてくれない++もうやだ。こんなつらい思いをするなら」「つかねえ・俺を誰か救ってくれ」ということになる。そんなときにオープンウオータースイミングはメンタル面が70%を占めることを思い出してほしい。“楽観的”に考えること。決してパニックにならずにまずリラックス。誰もが経験すること。貴方一人が悲劇の主人公みたいに考えないこと。レース中にカレントを読み、的確に天候を判断する:

カレントや天候を読む

オープンウオーターならではのテクニックでどうしても経験がものをいう。自然を相手にするのであるからどうしても予測しえないことが起こる。

やはりスイムレースに何回か出場し、実際の海でいろいろ体験することによって身につくものだと考えます。常に変化する自然環境をいかに判断し、柔軟的な考えを持って、いろいろな状況に対応してゆくかが問われるのである。

ではどんなことを想定しなければならないのか。

天候(レース途中から急変する場合も想定して)

外気温・海水温(場所によって海水温が異なる)

風(陸と海では異なるので注意)

霧(視界がさえぎられる)

潮(干満時間を把握する)

カレント(リップカレントには十分注意すべし)

スタート付近のビーチの状況(貝殻・ロープ・支柱など物理的危険性のチェック)

コース面の状況(水深・障害物など)

ブイの周辺の状況(固定しているロープなどの状況)

海水温度もコース上で場所ごとに変化するし、潮の流れも異なる。また沖では風が強まり思わぬカレントができているかもしれない。そのような状況変化に順応し、いかに自分を適合させて“いい状態”を創造し、保ってゆけるかが優れた選手に課せられた課題だ。特にリーフ内では岩礁によって浅瀬部分でチョッピーな波や、不規則な大波などが発生するが、それに立ち向かって波の上を乗り越えようとしても戻されるだけ。うまくそのウエーブの底(下)に潜り込んで波の下を抜けてゆくようなテクニックが必要となってくる。

このように常に変化する条件を瞬時に判断し、自分のテクニックを駆使して最短距離を泳ぐことこそオープンウオータースイミングの醍醐味であり、ただ“スピードのある選手がレースに勝利することにはならない“理由でもあるのだ。

コーチやトレーナーがつくわけではないので、これらの作業をすべて一人でやらねばならない。トリノオリンピックでもスキー選手が「雪質によって板やワックスを選択し、その判断が良いか悪いかによってレースが決まってしまう」という話を紹介していましたが、まさしくオープンウオータースイミングでも同じことが言えるのではないでしょうか。

天候によって水着(ショート・ロング<袖なし・半そで・長袖など>のウエア)やゴーグル(クリア・スモーク・ミラーなど)の選択・ワックスの量・クラゲ避け、あるいは低温で雨天の場合などアップができない状態のときにストレッチコード(ハンドル付き・パドル付き)でのストレッチングやシミュレーションスイムなどなど状況を判断し、選択し、工夫すれば必ずいい結果は出るもの。頑張ってほしい。

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